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2015年5月31日日曜日

2018年、世界で一番になるために。ノルディックスキー複合のホープは、なぜ自転車に乗るのか

[photo]ノルディック複合のホープ、渡部兄弟がAACRに参加。普段からMTB,ロードを練習に取り入れている。
ノルディックスキー複合のホープ、渡部兄弟があづみのセンチュリーライドに参加した。
20年ぶりのメダル獲得に、日本が歓喜した2014212日。一時期は日本が世界を圧倒した種目、ノルディックスキー複合で、リレハンメルから20年の月日を経て日本にメダルをもたらしたのが渡部暁斗選手でした。

高校生時代にトリノオリンピックに出場。若くして日本代表として世界を転戦してきた彼がソチで獲得した銀メダルは、最終局面での激しい一対一の先頭争いもあり大きな話題となりました。また、弟の善斗選手も、中学時代から世界を転戦する日本のホープ。ノルディック複合日本代表としてソチに参加し、個人では15位、暁斗選手らと組んだ団体では5位となりました。

ノルディックスキー複合の未来を担う渡部兄弟が、524日(日)に開催した「アルプスあづみのセンチュリーライド」に参加されました。ノルディックスキーの魅力やソチの裏側、そして自転車との関わりについて、2人にお話を伺いました。

― ソチ五輪で活躍した渡部暁斗さん、善斗さんご兄弟とお会いできて光栄です。まずは、スキー競技との出会いを教えてください。

ソチでノルディック複合20年ぶりのメダル日本にもたらした渡部暁斗選手
渡部暁斗さん(以下、AW):「僕は長野オリンピックです。小学校3年生の冬でした。ジャンプを見て、その競技の迫力に圧倒されました。お客さんの歓声もすごかった。選手への声援のなかで、『ジャンプをやりたい!』と思いました。冬が終わってすぐに、地元の少年団に書類を持っていきました」

渡部善斗さん(YW):「僕は、外堀をだんだんと埋められていった感じです。白馬にジャンプ台ができて、選手が練習しに来るようになると、まず母親が見に行くようになりました。そして、暁斗や周りの友だちもジャンプを始めてある日、ひょんなことからジャンプの見学に行かされたんです。見るだけだと思っていたのですが、結局飛ばされました(苦笑) 帰りがけには、『来週も来るよな?』とコーチに言われてさらに、いつの間にか必要書類も提出されていて、チームに参加していました
渡部善斗選手。兄同様、学生時代から世界を転戦する日本ノルディック複合のホープ。

でも、すごく飛ぶ先輩がいて、かっこいいなと思うようになってからは、しっかりと練習するようになりました」

― スキーのジャンプってそんなに身近なものなんですね。
AW「そうですね。学校の授業でジャンプがあるくらいです。校庭に10mくらいのジャンプ台があることが多いですね。冬には2週間ほどの『ジャンプ週間』があって、そのときは男女学年問わず、みんなジャンプしますよ。


ちなみにジャンプ週間以外は、クロスカントリースキーでした。正直、クロカンはあまり好きではなかったです。もともと、ジャンプの選手になりたかったわけですし。

でも、あるときから複合競技の成績がジャンプのそれを上回りはじめました。『もしかしたら、複合のほうがセンスあるのかな?』と思い始め、悩んだあげく複合に集中するようになりました」

― ノルディックスキー複合の魅力ってなんでしょうか?

AW「試合展開やかけひきでしょうか。とても奥深いスポーツで、ジャンプの着順、天候、雪質・雪温とスキーの愛称、ストラクチャー(※)、ワックス 多くの要素が何百通りの組み合わせとなり、滑りにとても大きく影響します。そういったことが勝敗の5割を決めると言われます。
実は、単純にもがき苦しむスポーツというわけでないんです」

(※ストラクチャー:スキーの滑りをよくするためにスキー板の滑走面に施す溝。)

YW「機材選択や戦術、外部環境への対応など、実力以外の要素も非常に重要で、その点はロードレースと似ていると思います」

AW「ノルディック複合でも、『ひく』という表現があります。後ろについて空気抵抗を減らしたり、逆にひきすぎてスプリント前に燃え尽きるとかありますよ。自転車が好きな人は、楽しめるスポーツだと思います」

YW「ジャンプの結果次第では、逃げ集団ができたりとか」

― 逃げ集団に人を送り込むとか、チームとして戦うこともあるんですか?

AW「日本のように小規模なチームではないですが、オーストリアやドイツなどはチーム戦に持ち込むこともあります。エース級の選手がジャンプで出遅れても、もし他の選手が先頭集団に入っていたら、彼らが集団を遅らせてエースを待つとか。逆に、僕たちは彼らの戦術を打ち破るために集団を引くわけです。戦局を読みながら観戦するのは面白いですよ。

例えば、ソチではドイツのエリック・フレンツェル選手と僕がデットヒートを繰り広げた、というストーリーですが、実はあれ、ちょっと違うんです。

もちろん、エリックとも競っていましたが、僕らがお互いに警戒していたのは15人ほどの後方集団。中には4名のとても強い選手がいて、ローテーションをかけつつ、すごい勢いでタイム差を縮めていました」

YW「後方集団こそ、デットヒートだったんだよね。暁斗たちは集団から逃げ切りたかったから、実は2人で結託して後ろから逃げていたんです」

AW「僕とエリックはデットヒートというよりも、むしろ国家の壁を越えて、協力して走っていたんです。後ろには絶対に追いつかせないぞ、という共通の意識がありました」

YW「お互いに勝ちたいよな、みたいな。でもエリックは、自身が最後は絶対に有利だと知っていたから、あまり積極的にひかなかったよね」

AW「そうだね。エリックが巧かったのは、スプリントに絶対の自信があったから、前にでてもスピードを上げなかったところ。スプリントで不利だった僕は集団に吸収されたくなかったから、頑張ってひっぱる。彼がペースを落として、僕があげるという図式でした。こういった戦術的要素は、ロードレースに本当に近いと思います」

― なるほど。戦術のほかにも、機材への依存度が高い点も共通点ですよね。自転車においても機材の違いを感じますか?

AW「そうですね。スキーは触れば、柔らかさとかすぐ分かる。自転車も、乗ればすぐに分かりますよ。ペダルするだけでも、バイクの良しあしが感じられます」



― 自転車をトレーニングに取り込んでいますが、なぜでしょうか?

AW「ロードバイクは基礎体力の向上。MTBは少し違っていて、バランス感覚や技術など、体力とは違った要素です。下りのあと、急な上りで最大トルクをかけるとかより実践的なトレーニングかもしれません」

YW「僕は14年から、暁斗に教えてもらってMTBも結構やっています。楽しいですね。そして確かに、クロスカントリースキーのレースに似ている点もあります。上りで頑張って、平地をつないで、下りはコース取りを考える。僕たちにとっては、より実践的な練習と言えそうですね。

夏はMTB、そして冬はクロスカントリーという流れで考えれば、一年を通して共通のフィーリングを味わえそうです。相当に追い込めると思いますよ。」



― 普段のトレーニングでどれくらいの距離を乗るんですか?
YW「ロードだと、90㎞くらい、4時間くらいが目安でしょうか。スピードはあまり気にせず、会話できるくらいで平地を走り、上りはちょっと頑張る」

AW「ライド後に平均速度を見ると、時速27㎞くらいが多い。スピードよりも心拍を重要視しています。大体120くらいを維持しています」

― ちなみにレース中は、心拍ってどれくらいまで上がるんですか?

AW190くらいかな」

YW「それくらいですね。早い人がいると、本当に長い時間180とか維持しないとついていけないこともあります。そこから、ラスト1㎞はスプリントで190まであげるんです」

AW「ですが、自転車は基礎体力をあげるベーストレーニングとして考えているので、なるべく疲れをためないことを意識しています」

YW「メーントレーニングはローラースキーで、こちらは全身運動で強度も高く、2時間もやると体力を使い切っちゃいます。自転車は4時間のライドとか普通ですよね。そんな長時間にわたる競技ってあまりないですよね」

AW「それと、気分転換も自転車に求める大切なポイントです。以前はランニングとローラースキーがメインでしたが、ランニングはひざへの負荷が高いですし、また同じメニューでは飽きがきます。トレーニングの幅を広げる必要がありました。海外選手が自転車でのトレーニングを取り入れていると聞いていたので、じゃあやってみよう、と」



― ロードバイクの魅力ってなんでしょうか。

AW「遠くまでいけるところ。ランニングでは、なかなか実現できない距離を走れます。自分自身のエンジンで、一番遠くまでいけるスポーツです。達成感もありますし、道すがら出会う景色もすばらしい」

YW「長野でヒルクライムすれば、頂上ですばらしい景色に出会う。辛いけれど、走って良かったと思えるんです。自分の脚でこいでスピードを出す爽快感は、他にありません。

あと、スキーやランニングとか、疲れ切っちゃうともうそこから進めないじゃないですか。でも、自転車って、それでもなんとか転がってくれる。これは新しい体験ですよ。『限界、もう無理!』という先が見やすい感じです。新しい自分に出会える、みたいな(笑)今回のあづみのセンチュリーライドでは160㎞を走ります。本当に初めての経験なので、新しい自分に何人も出会えそうです。楽しみですよ(笑)」

― ありがとうございました!

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